先日、整体院でフットマッサージを受けた時に「水を1日に2L飲む」ことを勧められた。
何でも、老廃物の排泄に水が必要なのだとか。
私の場合、足にむくみや冷えがあるが、「水を1日に2L飲む」ことで改善する可能性があるという。
「1日に2リットルの水」が健康やダイエットのためには必要だとよく言われるが、そもそも根拠があるのだろうか?
調べてみたところ、「水1日2L」に科学的根拠はなかった。
では、1日に必要な水分摂取量の目安はいくらなのだろうか?
1日に必要な水分摂取量のの計算式とは?
調べてみた。

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「水を1日に2L飲む」根拠

「1日2リットルの水」は誤解?

ウェイン州立大学運動スポーツ科学准教授であるタマラ・ヒュー=バトラー氏は、「全ての人が1日2リットルを飲むべき」という考えは誤解に基づくとして、その問題点を指摘している。

水
ヒュー=バトラー氏によると、実は「人には1日2リットルの水が必要」という考えの科学的根拠ははっきりしていないとのこと。

●「人には1日2リットルの水が必要」という助言は1945年に発表されたアメリカ食品栄養委員会の食事摂取基準に由来するが、一次研究によるものではない。
●「人には1日2リットルの水が必要」という主張は欧州食品安全機関も2019年に発表しているが、ここでいう水分とは水単体ではなく「全ての飲み物および食品に含まれる水分」の合計量となっており、「1日2リットルの水が必要」という言葉は誤解に基づく。
※参照:健康やダイエットのために「1日2リットルの水」は不要、本当に必要な水の量とは?

さらにヒュー=バトラー氏によると、全ての人にとって必要な水分量は異なり、一律の基準を設けることは不適切だと主張する。
ヒュー=バトラー氏は、人が必要とする水分量は、主に以下3つの要素によって決まってくると言う。

・体重:体が大きな人ほど大量の水が必要になる。
・環境の温度:気温が高くなるほど人は汗をかき、水分が失われるので、水が必要になる。
・運動レベル:運動の強度が高くなるほど、水分が失われるので、水が必要になる。

1日に必要な水分は2.5L?

カナダ・ローソン健康研究所とウェスタン大学の研究の主任研究者のウィリアム・クラーク教授によれば、「1945年に米国食品・栄養委員会が『1日に少なくともコップ8杯の水(2.5L)を飲むこと』を推奨し始めてから、このガイドラインは一般的になってきたと主張する。

厚生労働省は、「人間のからだの約60%は水分でできており、1日2.5リットルの水を飲むのが理想」といった内容のことが書かれているポスターを出しているが、恐らくは米国食品・栄養委員会の主張する「2.5L」に基づいたものであろう。

ここで1点、気になることがある。
前述のヒュー=バトラー氏の主張では、同じ1945年のアメリカ食品栄養委員会の食事摂取基準を取り上げているが、その基準では「人には1日2リットルの水が必要」とあり、ウィリアム・クラーク教授が取上げた「2.5L」と0.5Lの差がある。

これはどういうことだろうか?

コップ1杯の水の量は?

「コップ8杯の水」と言う場合の「コップ」1杯の量はいくらなのだろうか?
同じ「コップ8杯の水」でも「コップ」の大きさによって全体の量は異なる。
ちなみに「水を飲む健康法」で推奨される「コップ」1杯の水の量は200ml*だ。
*一度に吸収される水の上限が200mlという根拠による

これで計算すると200ml×8杯=1,600ml=1.6Lとなり、2.5Lどころから2Lにも至らない。

しかし、これには理由があった。

「1日に必要な水分」と「摂取すべき水」を分ける

米医学研究所食品栄養局(FNB)のリポートには続きがあった。
2.5リットルの水分の「大半は、調理済みの食品に含まれている」と指摘している点。

即ち、「1日に必要な水分」は「2.5L」だが、そこには食事や飲み物から摂取する水分も含まれている。
それ以外に「摂取すべき水」は、コップ8杯(×200ml=1.6L)と考えると理解し易い。

「水を1日に2L飲む」根拠【結論】

以上から、早々と「水を1日に2L飲む」科学的根拠が無いことが明らかになった。
しかし、これは「水を1日に”2L”飲む」の”2L”という量に対して科学的根拠が無いというだけで、水が人間にとって必要なことには変わりはない。

では、1日に必要な水の量はいくらなのだろうか?

1日に必要な水分摂取量の目安はいくら?

1日の水分摂取量の目安[1]=2.4L

1日に水をいくら摂る必要があるか?
1つの考え方は、1日に排泄される水分から推し量る方法だ。
以下の記事に1日に排泄される水分量は約2.4Lとあった。
水は1日どれくらい飲めば良いか【健康長寿ネット】

約2.4Lの内訳は以下。
・尿量:約1,500ml
・便:約100ml
・呼気:約300ml
・汗:約500ml

合計2.4Lの水分が体から失われるので、同等の水分を補給する必要がある。

そして、摂取する水分の内訳にも言及している。

・飲料水:約1,500ml
・食事:約1,100ml
・代謝水*:300ml
*体内で栄養素がエネルギーになるときに生成される時に発生する水

勿論、これには個人差があるので一つの目安に過ぎないが、アメリカ食品栄養委員会の食事摂取基準が科学的根拠が明かにされていないのと比べると、はるかに科学的根拠的根拠に基づいているのではないだろうか?

上記の例では1日に”水”としてして摂る水分は約1,500mlとなり、コップ8杯分(×200ml)の1,600mlと近い数字になる。

1日の水分摂取量の目安[2]=2.3L

一方、1日に排出される水の量は2.3Lと主張する記事もある。
出ていく水ととりこむ水【サントリーのエコ活】

2.3Lの内訳は以下。
・便と尿量:約1,300ml
・呼気:約400ml
・汗:約600ml

そして、摂取する水分の内訳は以下。

・飲料水:約1,500ml
・食事:約600ml
・代謝水*:約200ml

不思議なもので、健康長寿ネットの記事もサントリーの記事も飲料水から摂取する水の量は同じく約1,500ml。
しかし、その他の内訳は全く異なる。

1日の水分摂取量の目安[3]=2.5L

1日の水分摂取量の目安は2.5Lという主張もある。
ひまわり中央整骨院の高橋洋平氏の「腰痛の9割は水で治る」と言う本に記載されている。

2.5Lの内訳は以下。
・便と尿量:約1,600ml
・呼気:約300ml
・汗:約600ml

そして、摂取する水分の内訳は以下。

・飲料水:約1,200ml
・食事:約1,000ml
・代謝水*:約300ml

いずれも、数字の根拠が記載されていないので、どこまで信用が置ける数字なのかは不明だ。
しかし、2.3L、2.4L、2.5Lと近い数字ではある。

体重から1日の水分摂取量を計算

1日に必要な水分量を体重を元に計算する方法は、ネットや書物に散見する。

1日の水分摂取量の 計算式

健康な成人は毎日、体重1キロにつき約35mlの水が必要だという説がある。これは科学団体の一般的なガイドラインに基づく最低限の量だそうだ。
1日に必要な水分量は?【BRITA】

●例1:体重50㎏
35ml×50=1,750ml
●例2:体重60㎏
35ml×60=2,150ml
●例3:体重70㎏
35ml×70=2,450ml

但し、これはあくまでも1日に必要な水分量であって、飲料水から摂取すべき水の量ではない。

また、毎日飲む必要のある水の量は、年齢や食事、活動レベル、天候の影響も受け体重以外にも汗の量などによっても排出される水分量は変化する。

例えば、汗をよくかいた日と汗を全く書かなかった日とでは、排出される水分量は異なるので、当然、必要な水分量も変わる。

【年齢別】1日の水分摂取量 の計算式

前述の「1日に必要な水の量計算方法」は「体重(kg)×約35ml」であった。
しかし、以下の記事では、さらに年代別の1日に必要な水の量計算方法が記載されている。
1日に必要な水分量は?水の重要性と水分補給のタイミング【新聞西衣料サービス株式会社】

【年齢別必要量】
30歳未満・・・40ml
30~55歳・・・35ml
56歳以上・・・30ml

例えば25歳と60歳とでは、同じ体重でも1日に必要な水分量は異なる。
仮に体重が共に65㎏だとする。

●25歳
65×40=2.6L
●60歳
65×30=1.95L

何と0.65Lの差がついた。

しかし、ここで問題点がある。
1日に必要な水分量が分かっても、飲料水から摂る水の量が分からないと意味がないという点。

飲料水から1日に摂取すべき水分量の計算方法

1日に必要な水分量として3つの主張を取り上げた。
1日の水分摂取量[1]=2.4L
1日の水分摂取量[2]=2.3L
1日の水分摂取量[3]=2.5L

いずれの場合も、飲料水から摂取する水の量は1.5L
必要摂取量に対する割合は以下になる。

①1.5L÷2.4L=63%
②1.5L÷2.3L=65%
③1.2L÷2.5L=48%

③のケースは他と数値的にかい離が見られるが、ここでは仮に1日に飲料水から摂るべき水の量は1日に必要な水分摂取量は最低60%としよう。
その場合、前述の体重が65㎏の25歳と60歳の1日に飲料水から摂るべき水分量の最低目安は以下になる。

●25歳
(65×40=)2.6L×60%=1.56L⇒コップ8杯以上
●60歳
(65×30=)1.95L×60%=1.17L⇒コップ6杯以上

ざっくりとだが、この辺が目安になるのではなかろうか?

飲料水とは何?

飲料水とは”水分”ではなく”水”だ。
アルコールやコーヒーなどには利尿作用があるので、飲まない人に比べて余分に水分が排出されてしまう。
仮に飲んだ量と同じ水分量が排泄されるとするならば、差引0になる。
従って、アルコールやコーヒーは飲まないか、飲む場合は、同量の水を摂取することが望まれる。

勿論、甘いジュースなどには糖分が含まれているので、摂りすぎには注意が必要だ。