糖質制限に興味を持って糖質制限食の第一人者である江部康二医師の本を読んでみた。
ところがネットで調べると「糖質制限は危険」という記事がある。
主に雑誌やTVの健康番組で取り上げられた糖質制限の危険性を記事にしたもの。
糖質制限は危険なのか?
そこで、糖質制限は危険だと主張する理由(根拠)に対する反論を江部氏の本及び記事から探してみた。

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江部氏の主張する糖質制限とは?

糖質制限

江部氏は高雄病院理事長。
日本糖質制限医療推進協会理事長も務める。

一般的な糖尿病の食事療法は「カロリー制限食」だが、「カロリー制限食」は頑張っても成果が出ないばかりか、症状をどんどん悪化するのが現状。

それに対して、江部氏が理事長を務める京都・高雄病院が血糖値をコントロールして糖尿病とその合併症を防ぐ為に、日本で初めて1999年に開始したのが、糖質制限食である。

糖質を制限すると体重が落ちる事からダイエット法として注目されたが、本来は糖尿病患者の為の食事療法だ。

糖質制限食は江部氏自らもその効果を体験し、今も続けている。

江部氏の著書では、糖質制限食の効果や根拠等が明快に語られている。

糖質制限ダイエットの危険性に関する記事

糖質制限の危険性について熱心なのが週刊現代だ。
数回取り上げている。

やっぱり危ない!? 「糖質制限ダイエット」第一人者が急死した
これは、「糖質制限ダイエット」第一人者であるノンフィクションライターの桐山秀樹氏が急死(享年61)したことに端を発した記事。

桐山氏は糖尿病が発覚し、江部氏の著書『主食を抜けば糖尿病は良くなる!』を参考に糖質制限ダイエットを実践したところ、血糖値は93に半減、体重は15kgも減った。

そして、糖質制限の危険性を主張する専門家の話を紹介する。

「脳を動かすエネルギーは100%、『糖』。炭水化物を食べずに、脳を正常に保つためには、一日に大量のたんぱく質や脂質を摂らなければならない。数kgもの肉を食べ続けることは現実的じゃない。」

痩せたのは脂肪が落ちたからではなく、体内の水分が無くなっただけ。糖エネルギーが不足すると、それを補うために、筋肉を分解してアミノ酸に変えて脳にする。その時に水分を使用するので、体重が落ちる。」

糖質制限ダイエットをしている人は、慢性的な眠気を抱えており、すぐ眠ってしまうのが特徴です。これは脳が極力エネルギーを使わないように指示を出すため」

筋肉量はどんどん落ちるので、骨がスカスカになり骨粗しょう症になる危険性もある」
(京都大学大学院の森谷敏夫人間・環境学研究科教授)

糖質制限ダイエットは死を招く恐れまである」
「2006年に『ランセット』『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』という世界の二大医学誌に、糖質制限ダイエットを厳格に実行すると、体内に老廃物が溜まり、体が酸化し非常に危険な状態に陥るケースが報告された」(愛し野内科クリニック院長 糖尿病専門)

そして、実際に糖質制限ダイエットを実践した医師の体験談も紹介されている。

「私が糖質ダイエットをしたのは36歳の時でした。あっという間に15kgも痩せたので喜んでいたのですが、しだいに頭がぼーっとする状態が続くようになりました。」
「ある朝、目覚めると右半身が麻痺してまったく動かなくなった。脳梗塞の一歩手前の一過性脳虚血発作を発症していた。」
「検査の結果、たんぱく質や油分を摂りすぎることで、脂肪飽和になり、一時的に脳の微小血管が詰まったことが原因だと判明」
(医療法人再生未来Rサイエンスクリニック広尾院長 日比野佐和子医師)

糖質制限ダイエットの危険性まとめ

上記で上げられた糖質制限ダイエットの危険性をまとめてみる。

  1. 「糖質制限ダイエット」第一人者の桐山秀樹が急死
  2. 脳を動かすエネルギーは100%、『糖』。炭水化物を食べずに、脳を正常に保つためには、一日に大量のたんぱく質や脂質を摂らなければならない。
  3. 痩せたのは脂肪が落ちたからではなく、体内の水分が無くなっただけ。
  4. 糖質制限ダイエットをしている人は、慢性的な眠気を抱えており、すぐ眠ってしまうのが特徴。
  5. 筋肉量はどんどん落ちるので、骨がスカスカになり骨粗しょう症になる危険性も。
  6. たんぱく質や油分を摂りすぎることで、脂肪飽和に。

これらの主張に江部氏は何と言っているのか?
本やネットの記事から拾い出してみる。

「糖質制限ダイエット」第一人者の桐山秀樹が急死

これに関しては、上記の記事に江部医師の反論が掲載されている。

「桐山さんが亡くなられたのは本当に残念ですが、直接的な原因は、糖質制限ダイエットではないと考えます。

桐山さんの場合、もともと心臓が苦しくなり、医者に駆け込んだところ糖尿病が発見されましたが、そうなるまでに何年間、高血糖の期間があったかが問題です。

『高血糖の記憶』と言うのですが、いくら血糖が正常になっても、過去に一旦発症した血管の狭窄は、簡単にはなくならないのです。痩せて安心する人も多いのですが、定期的に検査をしないと、心筋梗塞などを起こす可能性があるのです」

さらに、江部氏は著書で「私の本を読んで糖質制限食を始めたわけですが、半年くらいたって肥満と血糖値が改善したあたりから、ご自分の判断で結構、糖質をとっていたようです。」と言い、その根拠に桐山氏と長年パートナーとしてすごしてきた文芸評論家の吉村裕美さんが「週間文春」(2016年3月3月号」で明かした内容を取り上げています。

この6年間、三食とも炭水化物を摂らないスーパー糖質制限を続けていたわけではありません。…」

江部氏の主張

江部氏は糖質制限の危険性を主張する人がいることを承知しており、ネットの記事やブログ等で自分の意見を主張している。

その主張のポイントは2点に絞られる。

①医師や管理栄養士が不勉強で、古い常識や論文(の間違い及び解釈の間違い)に基づいて糖質制限の危険性を主張

②専門家がエビデンスもなく糖質制限の危険性を主張

世の中の常識は先に行くと非常識になる例が巷に溢れている。
例えば、卵を食べ過ぎるとコレステロール過多になるので1日1個まで、という説。
長年信じられてきたが、今はコレステロールの摂取量に制限はない。

色んな説の根拠となるのは論文(やデータ)だが、論文そのものが間違っているケースがある。
※エビデンスなしに信じられている説もある。
さらに問題をややこしくしているのがその間違った論文をさらに自分の都合の良いように解釈する専門家がいることだ。

論文が確かなものか精査する必要がある。
※素人には無理だが。

糖質制限の危険性を主張する医師や管理栄養士が理由(根拠)とする論文や常識が古いと前提が間違っているのでその主張は根拠がない(=嘘)だということになる。

では、残りの糖質制限の危険性の主張を取り上げ、それに対して江部氏は何と主張しているのか見てみる。
※江部氏が記事で直接反論しているわけでありません。江部氏の本や記事から関係ある部分を抜き出したものです。

脳を動かすエネルギーは100%、『糖』。炭水化物を食べずに、脳を正常に保つためには、一日に大量のたんぱく質や脂質を摂らなければならない?

「脳はブドウ糖しか使えない」しか使えないと言うのは化学的に間違い。「脳はブドウ糖だけでなく、ケトン体もエネルギーとして使える」

後半の危険性の主張については次項を参照下さい。

痩せたのは脂肪が落ちたからではなく、体内の水分が無くなっただけ?

「痩せたのは脂肪が落ちたからではなく、体内の水分が無くなっただけ」と主張するエビデンスがない。

「ブドウ糖を作り出すための糖新生のプロセルにおいては、メインのエネルギー源は脂質(脂肪酸)ですから、脂肪の分解と燃焼によるダイエット効果が非常に高いのです。」

⇒痩せたのは脂肪が落ちたから。

糖質制限ダイエットをしている人は、慢性的な眠気を抱えており、すぐ眠ってしまうのが特徴?

その根拠は脳のエネルギー不足ということだが、糖新生で脳に必要なエネルギー足りる。不足というなら全体の摂取カロリー不足が原因ではないだろうか?(江部氏の主張から推測した意見です。)

筋肉量はどんどん落ちるので、骨がスカスカになり骨粗しょう症になる危険性も?

糖質制限で筋肉量が落ちる?

「カロリー制限によるダイエットでは、脂質を含む肉類や魚介類といったタンパク質をセーブしすぎるため、タンパク質が不足する恐れがある。
その点、糖質制限ではタンパク質の摂取量はむしろ増えるので、タンパク質の不足で筋肉が落ちることはない。

筋肉量が落ちるのは糖質制限だけでなく、カロリー制限した為と考えられる。

カロリー制限すると、エネルギーバランスの足りない分を補う為、体内のエネルギー源が分解され消費されてしまう。

その時に無駄な体脂肪だけが消費されるのなら問題はないが、筋肉を構成しているタンパク質もエネルギーとして消費されるため、基礎代謝が下がってしまう。⇒筋肉量が落ちるのは摂取カロリー不足が原因。

糖質制限で骨粗しょう症になる?

江部氏は著書「主食をやめると健康になる」で骨粗しょう症について言及しています。

「高タンパク質を続けると、骨粗しょう症になりやすいという説がありました。
世界中で30年以上論争が続いてきました。
しかし、この論争に決着をつけるような研究論文が2002年に発表されました。
女性では動物性タンパク質を摂ると骨粗しょう症が予防できる可能性が高まりました。男性では、予防できるかどうか分かりませんが、少なくとも骨粗しょう症の悪化はありませんでした。
※出典:主食をやめると健康になる

たんぱく質や油分を摂りすぎることで、脂肪飽和に?

動物性脂肪が悪いとする常識も誤りだと証明されています。」
「約35万人を5年から23年にわたり追跡した結果、飽和脂肪酸の摂取量と脳心血管疾患の起こった率とには関連がなかった

江部氏の主張は以下の記事及び本等を参照しました。
「栄養」について知らない「栄養士」が多すぎる
主食をやめると健康になる(2011年11月10日初版)
人類最強の「糖質制限」論(2016年4月15日初版)
江部康二の糖質制限革命(2017年4月20日初版)

糖質制限食を実践する時の注意点

スーパー糖質制限食とスタンダード糖質制限は医師の指導の元、正しい方法で実践するのが本筋。

専門家でない素人がいきなり自己流でスタンダード糖質制限を行うと問題が発生する可能性がある。

江部氏も「正しい糖質制限食」の普及に努めているので、自己流でやるのは危険だ。
疑問点は江部氏のブログにコメントを寄せてみてはどうだろうか?
ドクター江部の糖尿病徒然日記

本記事で取り上げた「糖質制限の危険性」の内容はネットで主張される意見の一部です。
今後、第2弾、第3弾を取り上げる予定です。
[関連記事]「糖質制限は危険」は嘘?危険性の理由(根拠)は間違いだった!