健康ドリンク「豆乳」は飲み過ぎの危険性はないのでしょうか?
豆乳に含まれる大豆イソフラボンは1日に摂取する上限値が決められています。大豆イソフラボンを過剰摂取するとどのような危険性があるのでしょうか?女性・男性・子供別に病気のリスクを見ていきます。
大豆イソフラボンの過剰摂取が問題にされる理由
豆乳ヨーグルトの成分、イソフラボンは、エストロゲンと構造が似ている為、継続して摂取すれば更年期の不調の緩和に役立ちます。
しかしながら、過剰摂取すると、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
内閣府食品安全委員会は「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」(2006年)の中で「大豆イソフラボンの安全な一日摂取量の上限値」や「特定保健用食品としての大豆イソフラボンの安全な一日上乗せ摂取量の上限値」を定めています。
なぜ、これらの上限値を決めたのでしょうかか?
それは、この報告書のタイトルに「特定保健用食品」とあるように、大豆イソフラボンを含むサプリメント(特にバストアップ関連)を摂取することにより、健康被害が出たことがきっかけではないかと思われます。
大豆イソフラボンを含む特定保健用食品(トクホ)の過剰摂取による健康被害を避ける為に、「特定保健用食品としての大豆イソフラボンの安全な一日上乗せ摂取量の上限値」を決める為に、まず「大豆イソフラボンの安全な一日摂取量の上限値」を決めた、という流れだと思います。
その証拠に「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」の「おわりに」には以下の記述あります。
大豆イソフラボンアグリコンの一日摂取目安量の上限値は、この量を毎日欠かさず長期間摂取する場合の平均値としてしの上限値であること、また、大豆食品の摂取量がこの上限値を超えることにより、直ちに、健康被害に結び付くというものではないことを強調しておく。
今回の大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価においては、これまでの長い食経験を有する大豆あるいは大豆食品そのものの安全性を問題としているのではなく、特定保健用食品として、大豆イソフラボンを通常の食生活に上乗せして摂取する場合の安全性を検討した。
ネットではさも、豆乳の飲み過ぎ=健康被害といった記事が多いですが、
これは正確ではありません。
あくまでも、大豆イソフラボンを含むトクホの過剰摂取を抑制するのが目的の基準だということです。
大豆食品だけで考える場合、データがないので何とも言えません。このことを念頭においてお読みください。
[補足]
上記の文章に「大豆イソフラボンアグリコン」という名前が出てきました。食品安全委員会のHPの「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」で、以下の説明があります。(一部抜粋)
大豆や大豆食品中に含まれる大豆イソフラボンは、主に配糖体として存在していますが、糖部分が分離したものはアグリコンといい、伝統的な大豆発酵食品中に含まれます。
大豆イソフラボン配糖体から、大豆イソフラボンアグリコンに換算する場合、配糖体とアグリコンとの分子量の比から求めることができます。
大豆イソフラボンの一日摂取目安量の上限値
大豆イソフラボンの一日摂取目安量の上限値は、トータル量と、食品から摂る大豆イソフラボンに上乗せしてトクホから摂る大豆イソフラボンの2種類があります。
大豆イソフラボンの安全な一日摂取量の上限値
70~75㎎/日
特定保健用食品としての大豆イソフラボンの安全な一日上乗せ摂取量の上限値
30㎎/日
一般の大豆食品からの大豆イソフラボンの一日摂取量は16~22㎎です。
◇閉経前女性
16㎎/日+30㎎/日=46㎎/日<70~75㎎/日
◇閉経後女性
22㎎/日+30㎎/日=52㎎/日<70~75㎎/日
◇閉経前女性
18㎎/日+30㎎/日=48㎎/日<70~75㎎/日
上記より、閉経前女性、閉経後女性及び男性のいずれにおいても、大豆イソフラボンを大豆食品から日常摂取量(16~22㎎/日)を毎日摂取している人については、特定保健用食品として30㎎/日相当の大豆イソフラボンを摂取することにより、大豆イソフラボンの安全な一日摂取量の上限値を超えることはないと、と考えられます。
以下に(安全評価)とあるのは「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」からの抜粋です。
女性への影響
女性の場合、閉経前と閉経後及び妊婦では体内でのエストロゲンの分泌量が異なるので別に考える必要があります。
閉経前女性
「大豆イソフラボン150㎎/日程度を摂取した閉経前女性における影響として、血清E2の低下と月経周期が延長しており、より低い大豆イソフラボンの摂取量60㎎/日前後においても報告されている。」(安全評価)
閉経後女性
「閉経後女性を対象とした大豆イソフラボン錠剤(150㎎/日)の5年間長期摂取試験のいては、30ヶ月(2年6ヶ月)の時点では子宮内膜増殖症は認められないが、60ヶ月(5年間)の時点では、子宮内膜増殖症の発症が有意に高かった。」(安全評価)
妊婦及び胎児
「大豆イソフラボンを特定保健用食品により追加摂取する場合の安全性は、現時点では判断することは出来なかった。・・・妊婦が特定保健用食品として大豆イソフラボンを日常的な食生活に上乗せして摂取することは、推奨できない。」(安全評価)
男性への影響
「男性について検討した報告においては、大豆イソフラボン数百㎎/日を摂取した男性における影響として女性化乳房の発現性が報告されている。」(安全評価)
大豆イソフラボンの男性への影響についてはTV番組「バイキング」でも取り上げられたことがある。
「豆乳の原料の大豆に含まれている大豆イソフラボンが、女性ホルモンと同じ働きをするのです。豆乳を飲み過ぎると、体内に女性ホルモンが増えて、男性ホルモンの働きを抑えてしまうのです」(内科医の大竹真一郎医師)
子供への影響
「ヒトのデータから、どの程度の量の大豆イソフラボンの摂取であれば安全上の問題であるか否か、科学的に判断することはできなかった。・・・生殖機能が未発達な乳幼児及び小児に対して、特定保健用食品として大豆イソフラボンを日常的な食生活に上乗せして摂取する事は、安全性が明確でない限り、推奨できないと考えられる。」(安全評価)
大豆製品に含まれる大豆イソフラボンの量
最後に大豆製品に含まれる大豆イソフラボンの量を記載しておきます。
※1人1食当たり
納豆:1パック(50g)当たり65.0mg
大豆飲料:125ml当たり69.0mg
豆腐:1/2丁(110g)当たり55.0mg
油揚げ:1/2枚(75g)当たり52.5mg
大豆煮:50g当たり30.0mg
きな粉:おおさじ1(6g)当たり15.6mg
みそ:おおさじ1(18g)当たり7.2mg
豆乳:1パック(200g)当り41㎎
尚、製品によって含有量は異なります。